ほとんどの不動産オーナーは、金融機関からの融資を受けて事業を開始します。 不動産事業融資の審査とは、どのような流れで行われるのでしょうか。 また、相性の良い金融機関の見つけ方も知りたいところです。 |
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●融資の概要 | |
審査の流れ | 一般的な審査の流れは以下の通りです。 @ 事前相談(仮審査申込み) A 正式申込み(担当者に指示された必要書類をそろえて提出) B 審査開始(審査には2週間程度かかることが多いようです) C 融資可否の通知(融資不可であれば、担当者のアドバイスを 聞き、プランを練り直して再度申請します。) D 契約(融資証明書や確約書を受け取ります。) E 融資開始 |
金利 | 金利には主に以下の3つのタイプがあります。 ・固定金利型:一定期間(10年間など)の金利が固定され、 その期間が過ぎると金利の見直しが行われます。 ・固定金利選択型:開始から一定期間(10年間など)は固定 金利ですが、その後は固定金利、変動金利から選択できま す。 ・変動金利型:半年に1回金利が変動します。 一般に、短期での返済、景気が低迷しているときには変動金利の方が有利になります。 変動金利から固定金利への変更は難しいようですが、他銀でのローン組換えなどで金利を下げる方法もあります。 |
融資時期 | 建設費の融資については、工事の進捗状況に応じて、 ・工事請負契約時 ・上棟時 ・竣工引渡し時 にそれぞれ1/3ずつ出してくれる金融機関が多いようです。 |
●金融機関の選び方 | |
民間の金融機関 | 一般に、返済期間の限度は30年前後、金融機関によっては、融資限度額が設定されているところもあるようです。 保証会社の保証が受けられる事、十分な担保がある事が必須条件です。 ・都市銀行:金利が最も低い分、審査は最も厳しくなります。 ・地方銀行:金利、審査とも都市銀行と信用金庫の中間に位置 します。比較的、不動産融資には積極的なところが多いよう です。 ・信用金庫:金利は若干高めですが、審査は迅速です。 (その信用金庫の会員であることが必要です。) ・信託銀行:財産の運用が主な業務になり、事業の収益性に加 え、融資希望者の資産等も勘案されます。 ・ノンバンク:金利が最も高い分、審査は迅速です。 ・農協:原則的に、農協組合員が対象になります。 |
住宅金融支援機構 | 35年間の固定金利で融資が組めます。 旧住宅金融公庫の時代と比べ、敷地面積や一戸当りの床面積の制限が緩和されたため,ワンルームマンション(25u〜)でも融資が可能になりました。 |
行政の補助金 | 行政によっては、特定の条件を満たすことで助成金を出したり、利子補給制度が利用できるところもあります。 積極的に市役所等に問い合わせてみましょう。 |
具体的には・・・ | 首都圏では、 ・MS銀行、R銀行、S銀行、O信託銀行、Y銀行 ・地域密着型の信金 などが不動産事業融資に積極的と言われています。 また、地元で長い付き合いがある、給与口座を持っている、金融商品などの取引実績があるなど、顔見知りの相手の方が審査に有利となることは言うまでもありません。 |
●金融機関がチェックすること | |
事業として 成立するか |
当然のことながら、銀行は事業の採算性を重視します。 企画の段階で事業収支の詳細なシミュレーション表などを準備しておきましょう。 (しっかりした「事業者」だとアピールします。) |
申請者の条件 | 安定した収入があること、確実な返済が出来ること、金融機関での事故がないことが前提条件になります。 一般に、審査に有利と言われる条件は、 ・サラリーマンである(安定した収入に高い評価) ・勤務先に高い信用力がある(大企業など) ・当該金融機関に給与口座を持っている ・積み立て、外貨預金など(金融商品)をやっている ・相続人に安定した収入がある などが挙げられます。 もちろん、これらの条件を満たさないからといって、審査に悪影響を及ぼすものではありません。 |
担保 | 銀行は十分な担保(融資金額と同等額)がないと、融資をしてくれません。 一般に、 ・土地の担保価値:路線価の約70〜80% ・建物の担保価値:固定資産税評価額(建設費の約60%〜) が目安とされています。 建設予定地とは別に、自宅(抵当権が外れている)などの他の不動産が有れば、それを共同担保にして融資を受ける事も出来ます。 但し、借地の場合はローンの担保にはなりにくいようです。 ちなみに、仮に銀行で融資OKが出ても、その後にいる保証会社が承認しないと、融資は実行されません。 |
●提出書類一覧 | |
個人属性の 提出書類例 |
・身分証明書 (健康保険被保険者証等) ・所得証明書 (源泉徴収票3年分、住民税決定通知書等) ・納税証明書 ・印鑑証明書 ・借入れ返済明細書 (他に借入れがある場合) ・確定申告書3期分 (個人事業主、既に他不動産所持の場合) ・家賃収入の通帳写し (既に他不動産を所持している場合) |
土地に関する 提出書類例 |
・公図(登記所にあるもののコピー) ・不動産登記簿謄本(土地) ・固定資産税評価証明書(土地) ・物件概要書 |
事業計画に関する 提出書類例 |
・配置図、平面図、立面図(パース) ・工事請負契約書 ・工事費用概算書(見積書) ・事業計画概要書(建物の規模、想定家賃と総利回りのシミュ レーション表などを記載したもの) |
●審査にあたっての注意点 | |
融資額の変更 | 一度決めた融資額を増額するのは至難の業です。 担当者が新たに資料を作成するには相当な時間を要し、こちらの計画性の弱さを露呈する事にもなります。 地盤改良の費用など、実際に調査してみないと必要かどうかわからないものもあります。こうした費用も、予め計算に入れておきましょう。 |
自己資金 | 少ない自己資金では、空室リスク、金利上昇リスクに対応する余裕が無くなり、経営が厳しくなる事が予想されます。 建設費だけでなく、事業全体のバランスも考慮し、出来るだけ自己資金の比率を高く設定しましょう。 |
担当者も いろいろです |
金融機関の社員だからといって、豊富な専門知識を持っているとは限りません。事前に予約を入れ、経験豊かなベテラン担当者とじっくり話をすべきです。 銀行の営業時間(9時〜15時)よりも、閉店後の落ち着いた時間帯に時間を取ってもらうのも一つの手です。 |
参考文献:浦田 健(2003)『金持ち大家さんになるアパート・マンション経営塾』 |