建物を計画している時、建物を建てる時、建物を運営する時… 対人的なトラブル、建物自体のトラブル、建物が悪影響を及ぼすトラブル… 様々なトラブルの予防策、対処策をまとめました。 |
|
●建設前・建設中のトラブル | |
事前の準備が大切 | 問題が発生してからでは対応が遅い、または非常に対応に苦慮することが多く、最悪の場合は工事が継続できなくなります。 何よりも事前の準備、調査、調整が大切になります。 |
日当たり (日照権) |
日照権に関するトラブルは後を絶ちません。 ある程度の高さの建物を建てると、周辺の敷地に日陰をつくってしまうことがあります。この場合、建設前の段階で近隣住民などへの十分な説明が不可欠となります。(着工前の説明義務は、多くの自治体で条例化されています。) なかなか納得してもらえない近隣関係者に対しては、了解を得るまで何度も説明の機会を設けます。(それでも納得してもらえない場合は、各自治体に相談してみましょう。) 万が一、近隣関係者から十分な理解を得られないまま建物を建ててしまうと、完成した後に多額の損害賠償金を支払うことにもなりかねません。 |
電波障害 | 日当たりと同様に、ある程度の大きさの建物は、周辺に電波障害(テレビの映像が乱れるなど)を起こす可能性があります。 このため多くの自治体では、建設前の電波調査を義務化しています。障害が起こると判定された場合、建築主は該当する地域に有効な解決策を施さなければなりません。 建物の完成後に障害が発生した場合も同様です。 |
騒音・振動 交通規制 |
建設工事が始ると、大型車両の出入りやクレーンなどの重機類が使用され、騒音や振動、交通安全の阻害など、少なからず周囲に迷惑をかけることになります。 当然、十分な事前説明が必要になりますが、低騒音低振動型の機器を使用したり、適切な位置に警備員を配置するなど、迷惑を最小限に抑える努力も求められます。 万が一クレームが発生した場合には、その内容を十分聞き出し、要求に応えられる部分、応えられない部分を明確にした上で、具体的な対応策とその理由をしっかり説明しましょう。 |
地盤 |
地盤に関するトラブルは、大問題に発展する場合があります。 ・工事の後、周辺の井戸水が枯渇、或いは汚染された ・工事中に隣接地で地盤沈下(不同沈下)が発生し、界壁や建 物の一部が損壊した ・掘削工事の最中、貴重な文化財が出土した ・掘削の結果、敷地外にまで及ぶ構造物が埋まっていた など、なんらかの補償が必要になるケースや、時には工事を中止しなければならない問題が埋まっている場合もあります。 事前の地盤調査は必須ですが、規模や土地の条件によっては、地下水脈や、埋設物の詳細な調査も必要になります。 |
敷地境界 | 敷地境界線の確定は、建物を建てる前にしっかり解決しておきたい事項です。 防火地域などの場合は、外壁を耐火構造にすれば敷地境界線に接して建てることができますが、敷地境界線が明確でないと、建物の大きさや位置が決められない場合もあります。 地積測量図(実測図)があれば話は早いのですが、正確性に欠ける公図(法務局が管理する地図で、土地の境界や建物の位置を記載している)しか手に入らない場合、弁護士や土地家屋調査士の協力が必要になることもあります。 |
工事の瑕疵 工期の遅延 |
完成した建物の品質や、施工業者とのやりとりが原因でトラブルが起きることもあります。 工事に手抜きやミスがあったり、施工業者の過失による工期の遅延があったりした場合は、建築主は施工業者に補償を求めることが出来ます。 その一方、建築主側が原因で工事や工期に変更が生じ、施工業者に損害が生じた場合は、建築主が補償を求められます。 |
建設会社の倒産 | 工事着工後に建設会社が倒産した場合、その時点までに支払った着手金や中間金はまず戻ってきません。(戸建住宅の場合は、住宅完成保証制度により、一定金額が保証されます。) また、建築主や設計事務所は別の建設会社を探さなければなりませんが、新築以上に手間がかかり、リスクも大きい引継ぎ工事を請負う業者は少なく、工事費用も嵩みます。 建設会社の財務状況は、請負契約を結ぶ前に必ず確認しておきましょう。 |
その他 |
一時的なものも含め、粉塵などが原因の大気汚染や悪臭、眺望権の侵害やプライバシーの侵害などもクレームとして挙がってきます。その都度、対処できる範囲を明確にし、丁寧かつ誠意のある説明・対応を心がけましょう。 |
●建設後・運営管理のトラブル | |
家賃滞納 | 不動産経営を行う上で、最も多いトラブルが家賃の滞納です。 入金日に家賃の入金が無かった場合には、 @ 翌日:入居者に対し入金が確認できなかった旨の連絡(郵送 または電話)をします。 A 1週間〜2週間後:それでも入金が無い場合には、督促状を 送付するか、直接訪問して入金をお願いします。 B 1ヶ月〜数ヶ月後:滞納が複数月続いたり、入居者が行方不 明の場合は、まず連帯保証人と連絡を取ります。 連帯保証人とも連絡が取れない場合は、解約予告状を送付の 上、内容証明郵便の送付又は公示送達(入居者が行方不明な どの理由で書類の送達が出来ない場合、裁判所の掲示板に一 定期間掲示することで送達したとみなす方法)を行い、契約 解除又は明渡訴訟といった法的措置をとることもあります。 上記の例だけでなく、常習的な家賃滞納者には面談の機会を設けるなど、一定のコミュニケーションを図ると共に、生活習慣や経済的事情も把握しておきましょう。 |
管理会社の 管理内容 |
管理内容の良し悪しによって、建物の寿命や事業収支、入居者の満足度などに著しい差が生じます。 ・数ヶ月に一度しか管理報告書が提出されない ・退去時の現状復帰清掃・補修工事の費用が高すぎる ・設備トラブルなどの際の対応が遅い ・入居者への対応が悪い といった、明らかに問題のある管理内容の場合は、管理会社に対して契約事項の再確認を行うと共に、管理会社の変更を検討する必要があります。 |
建物の品質 | 建物の良し悪しは、竣工後、実際に使用してみて初めて判ることが多いものです。 設計の問題 ・関連性のある設備や部屋がバラバラに配置され、日常生活や 作業時などの使い勝手が悪い ・日常のメンテナンスが面倒、大規模修繕工事やリフォーム工 事などの際、更新・変更が難しい ・防音性、断熱性など、基本的な快適性に欠ける ・デザインを優先し、耐久性に欠ける建材を多用している 施工の問題 ・一年もしないうちに外壁の一部が剥れた ・屋根や外壁の防水性能が貧弱で、すぐに雨漏りが発生する ・コンクリートにジャンカなどの打設不良箇所が多かったり、 ガラ(ゴミ)が混入している ・内装の仕上げが粗雑で、一部に不陸(デコボコ)がある まだ新しい(築数年程度)段階で上記のような問題点を発見した場合は、担当した設計事務所や施工業者に連絡を取るだけでなく、第三者的な立場の建築士や、専門の点検業者にも相談してみましょう。 たとえ建築基準法や各自治体の条例を満たしていても、事前の説明不足や明らかな作業不良などがあった場合は、設計・施工者の負担による補修工事や、損害賠償請求が必要になることもあります。 |
設備の故障・ 器具の不具合 |
・エアコンや給湯器といった設備の故障 ・水漏れ、排水管詰まりなどの水のトラブル ・ガラスの破損やドアの開閉不良 いずれのトラブルも、入居者にとっては日常生活に大きな支障をきたすトラブルです。管理会社を通じ、当日中に修理業者を呼ぶなど、迅速な対応を心がけましょう。 但し、入居者の使用法に問題がある場合は、入居者に修理費用を負担してもらいます。 |
騒音 | 隣室の生活騒音をうるさいと感じるかどうかは人それぞれにかなりの差があります。 クレームが生じた時は、 @ 詳細な状況を聞き取り、実際に騒音を聞きに行く A 騒音の大きさや頻度がどの程度なのかを把握 B 原因は建物なのか、入居者なのかを判断 C クレームを訴えた人物、訴えられた人物の職業・生活習慣 ・人格特性の把握 などを行った上で、対応の仕方も変える必要があります。 壁や床の防音対策が十分に施されていない場合、原因は建物にありますから、場合によっては床や間仕切壁に吸音材・遮音材を設置する必要も出てきます。 一方、大音量で音楽を流すなど、入居者の行為に問題がある場合や軽度な騒音の場合には、入居者全員に入居者マナーの案内を送付するなど、軽い注意喚起を行います。 それでも状況が改善されない場合には、騒音を計測するなど、具体的な証拠を掴んだ上で、ある程度迷惑内容が特定できる文面での注意喚起を行います。 それでもダメな場合は、直接訪問や面談の機会を設けたり、必要であれば弁護士などの専門家に対応を依頼します。 |
共用部の私物化 | 入居期間が長くなると、共用廊下などに私物を置きっ放しにして倉庫代わりに使用するなど、他の入居者の通行に支障をきたすような行為をする方もいます。 この場合も騒音トラブルと同様に、 @ 入居者全員に入居者マナーの案内などを送付 A 調査の上で具体的な迷惑内容が特定できる文面などを送付 B 直接訪問や面談の機会を設ける C 弁護士などの専門家に相談する といった流れで対応していきます。 |
ゴミのルール | ゴミの分別や収集日を守らない入居者は非常に多いと心得ておきましょう。 ゴミのルールについては、最初の段階で釘を刺しておくことが効果的です。賃貸借契約時もしくは入居してすぐの時点で、仲介業者又は管理会社にしっかり説明してもらいましょう。 また、定期的にルールブックなどの案内書を投函し、常に注意喚起を行うことも大切です。 しかし、入居者同士でのゴミ出しに関するトラブルの場合は、上記の他のトラブルと同様に、詳細な状況把握と段階的な注意喚起や説得が必要になることもあります。 |
ペット | ペットを許可しているマンションの場合、鳴き声や臭い、糞尿処理などのトラブルが発生することが多いようです。 飼主のマナー改善によってトラブルが解消する場合もありますが、ペット特有の習性や匂いに関しては防ぐ手立てが無いことも多く、入居の段階、つまり賃貸借契約書に飼育可能なペットの種類などを細かく規定しておくことが必要になります。 |
その他 | 上記のほか、無断改造・破壊、悪臭、鳩糞公害、ガラスによる反射光害、季節的なものから慢性的なもの、自分のビルが原因のトラブルや周辺のビルが原因のトラブルなど、様々な場所から様々な要因を持つトラブルが発生してくる可能性があります。 これらを未然に予測し、建設前の段階で全てを防ぐことは非常に困難です。その都度、判断を迫られる場面が出てきますが、無理に1人で解決しようとはせず、まずは専門家や同業他社に相談してみることが大切です。 |