設計とは、建物を計画すること。施工とは、建設工事のこと。 では、監理とは何をするのでしょうか? |
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●設計の仕事 | |
設計業務とは? | 設計業務では、建物のデザインや設計図書作成のほか、 ・行政各部課との協議、申請書類の提出 ・プロジェクトマネジメント なども重要な仕事になります。 つまり、全体を見渡しながら、建築に関するあらゆるノウハウを設計図面に落し込む仕事、ということができます。 ちなみに、設計契約や工事監理契約は、委任契約となります。 委任契約とは、 「当事者の一方が事務をなすことを相手方に委託し、相手方が これを承諾する。」(民法643条) とあり、業務(成果物)の完成をもって報酬を受取る請負契約とは違い、たとえ委託した業務が完成しなくても、その業務を遂行した割合に応じて報酬を請求できる契約になります。 医師や弁護士の仕事も、委任契約の上での業務です。 |
デザイン | まず、設計担当者が建築主の要望を聞き取り、現地の特性、周辺状況などを調べます。 また、市役所の建築関連部署などに出向き、どんな規制があるのか、どんな手続きが必要なのかなどを調べます。 その上で建物のコンセプトを決定し、どんな形にするか、どんな間取りにするかなどを検討・分析します。また、技術的な視点も取り入れて建物のデザインを固めていきます。 |
行政各部課との 協議・各種申請 |
建物のデザインや用途が決まっても、法律や条例に違反していると建物は建てられません。 そのため、工事を始める前に確認申請をはじめとした各種申請・届出書類を行政庁に提出し、確認通知書などの許認可を受ける必要があります。 また、建物の規模によっては、周辺地域の日当りなどに被害を与える恐れがあるため、事前に近隣住民の方々に説明を行ったり、万が一被害が出た場合の対処法なども協議しておきます。 |
プロジェクト マネジメント |
一つの建物を建てるには、非常に多くの人員、業者が関わることになります。 建築主、近隣住民の方々、行政各庁、施工業者、職人、構造設計事務所、設備設計事務所、ディベロッパー・・・ 様々な意見や要望を調整し、一つの形に取りまとめるのも、設計業務の大事な仕事です。デザインコンセプトの共有からコスト調整、スケジュール管理、トラブル対応まで、その内容は多岐にわたります。 |
設計図書作成 | 仕様書や設計図面など、工事の基になる図書を作成します。 仕様書とは、設計図面に記載できない構造手法や施工方法、材料の規格から検査方法まで、建設工事に関わる様々な事項をまとめたものです。 建物全てに共通する基準を定めた共通仕様書、各物件ごとに特殊条件などを定めた特記仕様書のほか、現場説明書や質疑回答書などがあります。 設計図面には、基本図面、確認申請用図面、実施図面などがあり、設計段階に応じて作成していきます。 基本図面とは、建物の大きさや形、間取り、配置などを把握するための図面です。平面図、立面図、断面図や仕上げ表などが該当します。 確認申請用図面は、建築のルールを守っていることを行政庁などに確認してもらうための図面です。基本図面に加え、求積図、日影図などを描き、必要な寸法、面積、材料名などを記入します。 また、構造図や構造計算書、設備図も作成します。 実施図面とは、施工会社が見積り金額を算出するために使用する図面です。確認申請用図面に加え、展開図や各部分の詳細な図面を作成し、部材などを細かく指定します。 |
●施工の仕事 | |
施工業務の概要 | 建設工事を行うことを施工と呼びます。 施工業務とは、ルールを守り、設計図面通り、予算・工程計画通り、そして安全に工事を完了させる仕事、といえます。 具体的な業務内容は、 ・見積金額の算出及び実行予算書の作成 ・施工図面の作成 ・施工計画書(全体工程表)の作成 ・施工管理(工程管理、品質管理、安全管理、予算管理など) ・近隣トラブルなどの対処 ・竣工図書の作成 などがあります。 ちなみに、建築主と施工会社が結ぶ工事請負契約は、工事の完成をもって報酬が発生する請負契約ですが、実際には工事の各段階に応じ、工事費を分割して支払っていく場合が多いようです。 |
見積金額の算出 実行予算書の作成 |
設計事務所が作成した実施図面を基に、どれくらいのコストで建物が建てられるかを検討・算出します。 建築主としては、出来るだけ安く、それでいて質の高い建物を建てたいわけですから、数社に見積りを依頼(相見積り)し、その中から最適な施工業者を選ぶのが一般的です。 実際に工事を受注すると、より具体的に予算を割り振り、実行予算書を作成します。 |
施工図面の作成 | 施工図面とは、設計事務所が作成した設計図書を基にして、仮設工事や躯体工事、仕上げ工事など、各段階ごと、各工事種別ごとに必要な詳細寸法、材質などを記した図面のことです。 つまり、コンクリートを打設する業者には躯体図(コンクリート寸法図)を、タイル施工業者にはタイル割付図を渡し、それを基に施工させるのです。 その為、電気や空調・衛生設備の施工図面を含めると、膨大な数の図面を作成することになります。 |
施工計画書の作成 | 施工計画書とは、設計図書や契約図書を基に、着工から完成引渡しまで、安全に、滞りなく工事を進めるために必要な計画をまとめたもので、その計画通りに工事を行うことを書面で約束したものでもあります。 工事全体の施工計画をまとめた総合施工計画書と、工事種別ごとに施工計画をまとめた工種別施工計画書(要領書)があり、工事概要、仕様、現場体制、施工方法、工程管理、品質管理、安全管理、仮設計画、設備・資材計画、廃棄物の処理計画、点検・検査方法、使用機材などが記載されます。 |
施工管理 | 施工管理とは、設計図書、契約図書通りに工事が完了するよう、工事全体(工種別)の指揮をとることをいいます。 その管理内容から、 ・工程管理:各工事・検査日程の調整(段取り) ・人員管理:必要人員の確保、職人の配置 ・品質管理:各工事、各段階での検査、適切な養生の実施 ・予算管理:実行予算書の遵守または再検討 ・安全管理:事故の未然防止対策の検討・実行 などに分けられますが、近隣トラブルなどの対処や、工法の検討、建築主や監理者への報告・説明業務なども含まれます。 |
竣工図書作成 | 建物が完成(竣工)したら、竣工図書を作成します。 (設計事務所が作成する図書もあります) 竣工した建物は、部分的な寸法や設備機器などに変更が加えられていることが多く、必ずしも工事開始前の設計図書の内容と一致しません。そのため、工事の変更箇所を図面上、書類上でも訂正し、竣工した時点での建物を正確に図書に残します。 竣工図書には、 ・鍵引渡書、同受領書 ・建物等引渡書、同受領書 ・建物工事保証書 ・確認申請図書(通知書など)、中間・完了検査済証 ・各種検査報告書 ・工事日報、監理日報 ・竣工図面(竣工後、数週間後に渡されることもあります) ・工事写真アルバム ・工事(下請け)業者一覧表 ・保守業者、緊急連絡先一覧表 ・各種取扱説明書、設備機器保証書 など、様々な書類があります。 これらの竣工図書の多くは、引渡し時に建築主に渡されます。 |
●監理の仕事 | |
監理って何? | 民法第635条 「仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達 することができないときは、注文者は、契約の解除をするこ とができる。ただし、建物その他の土地の工作物については 、この限りでない。」 つまり、建物が設計図書通りに完成しなくても、建築主は受取りを拒否することができないのです。 建築主は、設計図書の内容に納得した上で工事を依頼するわけですから、設計図と違う形状や配色になっていたり、手抜きなどで粗末な建物にされては困ります。 そのため、建築主側の立場で工事を指導監督できる専門家 = 工事監理者が必要になるのです。 ちなみに、建設工事における「監理」と「管理」は、以下のように区別できます。 監理:建設工事が設計図書通りに行われているか、発注者側 の立場でチェックすること。(設計事務所が担当) 管理:建設工事を行う側(受注者側)の立場で、工事現場を 指揮すること。(施工会社が担当) |
監理業務の概要 | 監理業務とは、建築主の代理人として工事を指導監督する仕事、ということができます。 具体的には、 ・見積書の精査と見積り合わせ ・工事請負契約書作成指導、同契約の立会い ・施工業者が作成した施工図面や工程表の承認 ・設計図書と工事内容の照合、変更内容の承認 ・材料、設備機器のチェック ・建築主への工事の進捗状況報告 ・追加工事やそれに伴う費用の調整 など、多角的な視点から工事全般をチェックしていきます。 |
見積り合わせ | 相見積りの際、最も低い金額を提示した業者が優良な業者とは限りません。見積内容の精査のほか、業者の持つ技術力や信頼度、熱意なども含めて検討し、最適な業者を選定します。 通常、工事請負契約手続きと併せ、設計事務所などが建築主をサポートする形で行います。 |
施工内容の確認 | 施工業者が決まったら、次は施工内容のチェックです。 実際に工事現場内を歩き回り、設計図書の内容が正しく反映されているか、工事の追加・変更箇所の確認、工事現場で使用される施工図面のチェックなども行います。 また、これらの内容や工事の進捗状況を随時建築主に報告し、工事の状況説明を行います。 |
設計・監理と 施工の分離 |
もし、設計者と施工者、施工者と監理者が同じ業者だったら、建物の品質はどうなるでしょうか。 設計者と施工者が同一業者の場合、デザイン性が後回しにされることが多くなります。設計側が優れたデザインを提案しても、施工が難しければ容易に却下され、無難なデザインに変更されることが多いのです。 また、施工者と監理者が同一業者の場合は、施工が雑になり、事故も多くなりがちです。厳しいチェック、指導が無く、設計図面どおりに建物を造ることよりも、よりコストを下げる、面倒な工事は省くといった手抜きが横行し易くなるのです。また、必要な安全管理まで怠ると、事故の発生率も高まります。 設計・監理と施工とを厳密に分け、設計と施工、施工と監理との厳しいやり取りを確保することが、建物の品質、工事の品質を高めることに繋がるのです。 |